保育の基礎知識

指導計画作成のコツを考える~保育士全員が悩みを経験?!~【前編】

保育の基本ともいわれる指導計画。保育士さんの多くは作成に苦労されたご経験があるのではないでしょうか。今回はそんな指導計画を作成する際のコツについて、2回に分けてご紹介します。新人保育士の方やブランクの長かった方、転職で新たな園に入職された方など、作成に困ってしまった際には、一度基本に立ち戻り、参考にしてみてくださいね!

  • 【前編】
    …まずは指導計画がなぜ必要なのか、またその種類や、長期計画、短期計画ごとに作成の際に気を付けたいポイントをご紹介します。
  • 【後編】
    …計画作成の際に押さえておきたい、年齢ごとの発達の特徴や、1日の保育の流れ、季節ごとの行事や文章の書き方についてご紹介します。

    《後編の記事を読む》
    【後編】指導計画作成のコツを考える~保育の流れと発達特徴の把握~

アンケートでは100%悩んだ経験あり!
指導計画づくりは難しい!

悩む保育士さんのイラスト
一口に指導計画と言っても、長期計画、短期計画などさまざまなものがあります。記入項目も多く作成するのはとても大変!悩んでいる保育士さんも多いようです。

指導計画作成に悩む保育士さんの声
◆初任で園の1年の流れがわからず、見通しを持って計画が立てられない。(20代女性)
 《参考》弊社実施アンケートより読者さまのご意見
◆保育園で勤めて5年…遊びや指導計画が立てられません。考えるのですが、浅はかで薄っぺらいものです。何を狙って、どこをのばしたいのかを明確にできない…。
 《参考》保育CAN|おしゃべりパティオより
◆現在、勤めている施設では、指導計画に個別計画も含まれており、「ねらい」から個別を考えていくのに苦戦している。個別については一人一人発達も違うので、全体的に考えるのは難しく思う。(30代女性)
 《参考》弊社実施アンケートより読者さまのご意見

アンケート調査では100%が苦戦の経験あり

弊社で行ったアンケートでは、全員の方が「今までに指導計画の立て方で苦戦した経験がある」と回答されていました。指導計画のどこで保育士さんが悩むかについて調べたある調査によれば、下記のような点が挙げられています。
 

保育士さんが指導計画で悩む点の例
●ねらいや内容のマンネリ化
●長期計画の子どもの姿のマンネリ化
●個々の発達の違いへの対応
●様式が変わった際の書き方
●文章表現
●ねらいの立て方
●ねらいや配慮などの書き方
●各記入項目の関連性
●時間の確保
《参考》保育所における指導計画作成に関する実態調査

 

そもそも指導計画とは?基本をおさらいしよう!


保育所保育指針には、保育者として目指すべき方向性が明記されており、「第4章 保育の計画及び評価」には指導計画についても記載があります。まずはおさらいとしてその内容を確認してみましょう。

【保育所保育指針】第4章 保育の計画及び評価
保育所は第1章(総括)に示された保育の目標を達成するために、これを具体化した「指導計画」を作成しなければならない。

保育過程および指導計画はすべての子どもが、入所している間、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、柔軟で発展的なものとし、また一貫性のあるものとなるよう配慮することが重要である。(以下略)

指導計画の基本的な留意点
1 子どもの生活や発達を見通し長期的な指導計画と、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成すること
2 子ども一人ひとりの発達過程や状況を十分踏まえること
3 子どもの発達過程を見通し、生活の連続性、季節の変化などを考慮し、子どもの実態に即した具体的なねらい及び内容を設定すること
4 具体的なねらいが達成されるよう、子どもの生活する姿や発想を大切にして適切な環境を構成し、子どもが主体的に活動できるようにすること
特に留意すべき点とは…?
発達過程に応じた保育 【3歳未満】
一人ひとりの成育歴、心身の発達、活動の実態などに即して個別的な計画を作成する

【3歳以上】
個の成長と子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮する

【異年齢/グループ保育】
一人ひとりの生活や経験、発達過程などを把握し、適切な援助や環境構成ができるよう配慮する

長時間にわたる保育 発達過程、生活のリズムおよび心身の状態に十分配慮して、保育の内容や方法、職員の協力体制、家庭との連携などを指導計画に位置付ける
障害のある子どもの保育 一人ひとりの発達過程や障害の状態を把握し、適切な環境下で、他の子どもとの生活を通じてともに成長できるよう指導計画に位置づける

家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなどの適切な対応をする

発達の状況や日々の状態で、柔軟に保育したり個別の関わりが十分行えるようにする

家庭や専門機関との連携を密にする

小学校との連携 就学に向けて保育所の子どもと小学校児童との交流や職員同士の交流、情報共有や相互理解など積極的な連携を図るよう配慮する
家庭及び地域社会との連携 生活の連続性を踏まえ、家庭及び地域社会と連携して保育が展開されるよう配慮する(地域の自然、人材、行事、施設などの活用)
※わかりやすいよう、上記では保育所保育指針の記載を一部抜粋しご紹介しています。保育所保育指針の第4章そのままの記載ではありませんのでご了承ください。

指導計画の種類とそれぞれの目的を考えよう


保育所保育指針にもあるように、指導計画には長期的なものと短期的なものがあります。具体的にその種類と目的を確認しましょう。
指導計画案

全ての指導計画に共通する注意点

◆関連性と連続性を持たせること

上の図で紹介した4つの指導計画は、一連のつながりを持っています。年間計画の実現のための月案、その実現に向け具体化された週案、そしてその日の保育の展開に落とし込んでいきます。断片的にならないよう注意しましょう。

◆子どもの発達をしっかり理解すること

今どのような発達の状態なのか、どんなものや遊びに興味をもっているか、友だちとどのように関わっているのか、クラス全体での位置づけは?といった「子どもに対する理解」はとても大切です。そのためには丁寧な観察とともに、発達心理学や幼児心理学からの分析が必要でしょう。

◆ねらいと内容を明確にすること

ねらいや内容を明確にすることで、必要な保育環境や保育者の援助をスムーズに考えることが可能になります。園児たちの発達の過程を参考にして、その時期の子どもに育ちつつあるものを見通すこと、子どもの経験する内容を、幅広い活動から考えることが大切です。

【ねらい】
その年度、月、週、日にそれぞれ子どもの中に育ちつつある、また育てたいと思う心情、意欲、態度に対する目標です。

(例)…保育者の援助のもと身の回りのことをできるようになり、自分でできる喜びを感じる。
(例)…自然の変化に気付いたり、全身を使って遊ぶ楽しみを発見する。

【内容】
ねらいを達成するために必要な活動であり、それは保育者の指導、援助していく事柄でもあります。具体的な活動内容のほか、活動を通じて子どもたちが体験する内面的な感情も含まれれます。

(例)…園庭の遊具で遊ぶなかで、体を動かす楽しさを学ぶ。
(例)…体調や気候に合わせて衣服を調節する習慣をつける。

◆4つの視点からの保育環境の構成

ねらいや内容を明らかにしたうえで、どのような環境が必要かを検討します。その際には下記の4つの視点を組み合わせるとともに、いまの子どもたちの活動の流れに沿って、時には子どもたちの作り出したものなども組み込んでいくことが大切となります。また、環境は「物的環境」「人的環境」の両面から考えるように心がけましょう。

【計画作成の際に持っておきたい4つの視点】
・安全・安心できる環境
・発達に応じた環境
・興味や欲求に応じた環境
・課題性をもつ環境

◆必要に応じて修正していくこと

指導計画はあくまでもあらかじめ考えた仮説。どんなに綿密でも、予想と異なる部分が出てくることもあります。そのためねらいや内容を修正したり、日々の積み重ねの中で長期の計画に修正が必要になる場合もあるでしょう。

【長期指導計画】を作る際に気を付けたいこと


ではここからは、4つの指導計画について、そのフォーマットの一例と、それぞれ注意したいポイントについてご紹介します。

◆年間計画の留意点◆

年間計画
上記のフォーマットでは、1年を4期に分け、それぞれに狙いや内容、環境、予想される子どもたちの活動、保育者の援助、期ごとの行事が書き込めるようになっています。また、家庭や地域との連携についても記入項目があります。(園によってフォーマットは異なります。)

【point】
・子どもは気候の影響を受けやすいため季節ごとの配慮をする
・行事について長期的な見通しをもって実施する
・計画通りに保育ができない可能性も考えて計画には弾力性を持たせる。
・年間計画の上位理念として、園全体の方針も考慮する。
【予想される子どもたちの活動】
計画に沿って用意された環境で生み出されるであろう、幼児の活動を予想します。

(例)…園庭で好きな遊びをする
(例)…友だちと一緒に遊び場を決めて一緒に使う。

【保育者の援助】
予想される子どもたちの活動に沿って、そこから子どもたちがねらいを身につけるために必要な保育者の手助けの方法を書きます。

(例)…自然物を使った遊びでの子どもの気付きを受け止める。周囲の子にも考えたり試す姿を伝え、興味関心が広がるようにする。

【家庭や地域との連携(子育て支援)】
園生活を考えるうえで家庭や地域との連携で特に注意すべきことを記載します。家庭への連絡や地域の環境を活用するためのやり取りなどについて触れます。

(例)…小学校の交流担当職員との連携を密にとり、子どもたち同士の交流の機会を設ける。

◆月案の留意点◆

月案

月案では、前月の子どもの姿から、子どもの中に育ちつつあるものを見通し、その月のねらいや季節や行事も取り入れた内容、保育者の援助についてより具体化します。フォーマットの例では援助の項目を食育、健康など細かく分け、また個々の発達段階に対応できるよう、園児個別の計画表が組み込まれています。

【point】
・年間計画に基づき、断片的なものにならないようにする
・前月末の子どもの姿や興味関心に沿ってねらいを設定する
・その月の季節の特徴や行事などを考慮する

【短期指導計画】を作る際に気を付けたいこと

◆週案の留意点◆

週案
週案は前週の保育記録などから、「なぜこのような行動をとるか」「何が育ちつつあるか」などについて検討し、ねらい、内容、環境、具体的な活動や保育者の支援を考えます。週案に日案をあわせた週日案として計画を立てている園もあります。

【point】
・月案のねらいや内容から脱線し断片的にならないようにする
・1週間は子どもの基本的な生活単位のひとつ。曜日や子どもの疲労なども考慮する
・天候や気温などをあらかじめ予測し検討する
・前週とねらいが重複したり、同じ内容が続くこともある

◆日案の留意点◆

日案
子どもの生活単位である1日を通じ、どのようにすれば生活が楽しく充実したものになるか、計画をたてます。フォーマット例では、予想される子どもの姿や環境、それに合わせた保育者の支援、留意点などがタイムテーブルごとに記入できるようになっています。反省や評価を書き込む欄を設けても良いでしょう。

【point】
・きのう、きょう、あすのつながりを大切に作成する
・週案と照らし合わせて作成する
・天候や気温などをあらかじめ予測し検討する
・反省・評価の観点なども考えておき、後日の計画に活かせるようにする
・同じようなねらいがつづくこともある

編集者より

読者への感謝のメッセージ
今回は基本的な指導計画の考え方や目的、大まかな注意点をお伝えいたしましたが、実際には年齢ごとの子どもの発達特徴や、季節の行事について、理解したうえで長期的な見通しを持たなければ、具体的な計画に落とし込みにくいものです。次回はめやすや内容といった計画を立てる際に参考になる、年齢別の発達の特徴や、季節の特徴についてご紹介してまいります。

◆アンケートにご協力いただきました皆さまに心より御礼申し上げます。後半でもご意見を参考にさせていただきます。どうぞ引き続きお付き合いくださいね!
 

参考文献・サイト

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