叱り方
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多忙な保育士さんの日常の中で、子どもの問題行動には頭を悩まされますよね。ついイライラして声を荒げて怒ってしまう人も多いのではないでしょうか。今回は、子どもが良くない行動に出てしまったときに冷静に対処し、的確に叱るためのコツをご紹介いたします。

ついイライラして怒っちゃう…

子どもの行動は予測不能です。早く次の作業や予定に進まなければいけないのに、騒いだり、何かをこぼしたり、危ないことをしたり、ケンカしたり…子ども好きの保育士さんでもつい、イライラして「もうーっ!」と怒ってしまいたくなりますよね。感情的になって怖がらせてしまうのではなく、効果的に子どもを指導するにはどうしたらよいのでしょうか?

「怒る」と「叱る」の違い

まず、「怒る」と「叱る」の違いを理解しておきましょう。

怒る

怒ることは、自分の瞬間的な感情の発散が目的です。怒るという行動の中には、怒りを受け止める子どもの気持ちやその結果について冷静に考えたり計算したりする精神的余裕がありません。

怒ると一見、子どもに「効く」ようにも見えますが、それは子どもが大人の怒りに怯えて萎縮し、「わけもわからずとりあえずその行動をやめている」ているだけのことが。この場合子どもは、なぜいけないのかを理解していません。結果、声を荒げないと言うことを聞かなくなっていったり、大人の見ていない前では平気で良くない行動を繰り返したり、反感からわざと大人の嫌がる行動をしてみせるようになることがあります。

叱る

叱ることは、子どもに「なぜいけないのかを伝えて理解させる」のが目的です。子どもが何かしてほしくない言動をしたとき、わいてくる怒りを自分の中で的確に処理したうえで、自分の言葉が子どもにどのように影響するのかを冷静に計算して行うのが「叱る」行為。「叱る」ことができれば子どもは何が・なぜいけないかを自分の頭で理解できているので、声を荒げずともおのずと良くない行動をしなくなります。

叱ることは冷たい「打算」に裏打ちされているようにも見えます。確かに、その叱る行為による結果・効果を考えながら叱るわけですから、冷静に考えなければでないとできるものではありません。

しかし、叱ることは実は深い愛に溢れた行為です。まず自分の中の怒りを受け止め、次に、良くない行動に出てしまった子どもの気持ちや背景を理解しようとする。最後に、温かい共感、思いやりを示しながら、わかりやすい言葉でまっすぐに「してはいけないこと」「なぜしてはいけないのか」を説明するのです。

あとに詳しく説明しますが、子どもの問題行動がその子の生命の危険に直結するなど非常に急ぐ場合は、単純に「その行動をやめて!」ということを短く「知らせる」だけの「叱る」もあります。叱ることは、大きく頭を使いながらも、深い愛を注いで行うものなのですね。

「問題行動」の理由を想像してみよう

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叫ぶ、他の子を殴る、落ち着きなく動き回る、危ないことをするなどといった子どもの問題行動の裏には、子どもなりの理由があることが多いです。とっさには理解しがたくてつい怒ってしまうような行為にも、不安や悲しみ、混乱、怒りなどが隠れていたりするのです。

最近は発達障害のある子どもも多いです。気持ちをうまく言葉で表現できなかったり、そもそも自分がどういう気持ちなのが理解できなかったりして、そのフラストレーションが問題行動として出してしまっている子も中にはいるでしょう。

「この子のこういう行動は、こんな気持ちをうまく表現できなくてやっているのかもしれない」…こんなつもりで捉え直してみると、子どもに寄り添いやすい気持ちになれるかもしれません。

叫ぶ場合についての詳細を過去記事で説明しています。
子どもが”奇声”を上げる理由とその対処法 | 保育のお仕事レポート

いろいろな叱り方のコツ

叱るときの基本

すかさず、簡潔に

すかさず、簡潔に

特に低年齢クラスの子どもはまだ小さいので、問題行動をしたときその場ですかさず簡潔に叱らないと、自分の行動と叱られたことをつなげて理解することができません。保育園ぐらいの歳の子どもには、「さっきのこうこうこういう行動はああでこうでダメだよ」といった叱り方はわかりにくいので、何か見つけたらその場で「それはダメだよ。こうこうだからね」という伝え方をしましょう。

わかりやすく「お願い」と「代替案」を

「どうして○○するの!?」(質問)
「それ何回目!?何度言ったらわかるの!?」(質問)
「(手をテーブルの上に出してほしいときに)あれれ?おててはどこかな?」(質問)
「○○ちゃんにはできないだろうね〜」(嫌味)

こんな言い方をしていませんか?これらは小さな子どもにはわかりにくいです。そればかりか逆効果になる場合も。質問には年齢が上がるほど屁理屈で応じるようになってきますし、嫌味は子どもを傷つけるだけのこともあります。

「○○はやめてね。危ないからね」(お願い)
「先生、○○ちゃんがそれするの心配だからやめてほしいな〜」(お願い)
「おててはテーブルの上に出そうね」(代替案)
「先生、○○ちゃんにこうしてほしいな〜」(お願い)

何かをやめてほしいときには、質問や嫌味といった回りくどい方法をとるのではなく、「やめて」とストレートにお願いしましょう。さらに代わりに「こうしてね」と代替案を示すと、子どももどうしたいいのかがはっきりわかるので言うことを聞いてくれやすくなります。

「ストップ!」

ストップ

叱るとき、理想は「なぜいけないのか」の理由を添えて伝えることなのですが、そうするだけの時間的余裕がないときもあります。高いところに登ろうとしている、コンセントに触ろうとしている、友達の首を絞めているなど、その行動が子どもの命の危険に直結するような場合がそうです。

そのときは、ぜひ「ストップ!」と短く声をかけてください。「ストップ」はとても優秀な言葉。「危ない!」「ダメ!」よりもさらに良い言葉です。

ストップの良い点は以下です。

●良い悪いの価値の感覚がくっついていない
●どうしたら良いのかが瞬時に伝わる

「危ない!」にも「ダメ!」にも良い悪いの感覚がくっついていますし、「ではどうしたらいいのか」が示されていません。これだとあまり効果が見込めません。

「ストップ!」と言われると、子どもは「怒られた!」とか「自分を否定された!」というような感情を覚える暇もなく、とっさに今している行動をやめます。これは心理療法にも使われている方法で、子どもだけではなく、大人たちが自分たちに使う場合も非常に有効です。

たとえば中学生ぐらいになっても指しゃぶりをやめられない子を治す心理療法では、指しゃぶりを見つけたときに家族が「ピッ」と短く笛を鳴らすというものがありました。笛である理由は、「より感情を排除し、純粋に気づかせる目的に使うことができるから」です。「ストップ」と言うときも、苛立ちや怒りなどをなるべく込めず、平坦かつ短くサッと言うのがより効果的です。

ストップの使いやすさ、その効果は、一度使うとわかっていただけるでしょう。とっさのときの言葉として、ぜひ覚えておいてください。

言うことを聞いたときの「ごほうび」を

ぜひ、子どもが言うことを聞いたときに「ごほうび」をあげましょう。なにも、おやつやらシールやらのモノで釣るということではありません。たとえば、「○○ちゃんよくやめられたね!えらいよ!先生嬉しいな!」と褒める、笑顔を向ける、なでる、抱っこするなどでいいのです。

子どもが自分が愛され評価されていると感じて、嬉しい気持ちになるような「ごほうび」をたっぷり与えてあげましょう。先生の言うことを聞けば自分にもメリットがあるということを理解すると、子どもは積極的に先生の言うことを聞きたいと思うようになります。

何がどうしていけないのかを具体的に説明する

なぜいけないのかの理由をきちんと説明することは、年齢が上がってくるほど大事になります。

「一人で滑り台に登っちゃダメって言ったでしょ!ダメなんだからね!先生の言うこと聞いて!」…これだけでは、子どもはなぜいけないのかを理解できません。次には、先生が見ていないところで「怒られなければいいや」と思って同じことを繰り返すかもしれません。

こんなときにはこんなふうに説明しましょう。

「一人で滑り台に登らないでね(お願い)。一人で登ると○○ちゃんがケガしちゃうかもしれないよ。○○ちゃんがケガしたら、○○ちゃんは痛いし、先生もママもパパも心配するよね(理由)。滑り台に登るときは先生と一緒にしてね(代替案)」

上で説明した「お願い」と「代替案」に「理由」を組み合わせます。この組み合わせは理想ですが、あなたなりに少しずつアレンジを加えて実践してみてください。

ケンカの場合は双方の気持ちを受容・代弁

子ども同士がケンカしたとき、つい感情的に「ダメでしょ!ごめんなさいしなさい!」と言っていませんか?これだと双方の子どもが気持ちを整理できず、怒りや悲しみ、モヤモヤが残ったままになる可能性があります。

「Aちゃんは、Bちゃんにおもちゃをとられてイヤな気持ちになって、Bちゃんを叩いちゃったんだね(代弁と受容)。でも、Bちゃんは叩かれて痛かったと思うよ(代弁)。おもちゃを返してほしいときは、返してねってお口で言おうね(代替案)。じゃあ、AちゃんとBちゃん、お互いにごめんなさいしようね(代替案)」

ケンカをするにはやはり子ども同士なりの理由があります。たいていのきっかけは怒りや悲しみといった感情的なもつれです。まずはそこを言葉にして代弁し、受容・共感してあげましょう。次からどうするかとか、お互いに謝るべきとかいったことは、十分に当事者みんなの心の整理がついたあとにするのがコツです。

子どもにもプライドがあることを覚えておく

小さな子どもにも、一人前のプライドがあります。大人と同じで、自分が失敗したり叱られたりしているところをあまりたくさんの人に見られることは恥ずかしいのです。このことを心の隅に留めておいて、特に一人を叱るときにはあまりほかの子どもの目につかないように気をつけましょう。

無理に隅っこに行ってヒソヒソ声で叱る、というほどガチガチに隠そうとする必要はありません。ただし、見せしめのように大声で大勢の前で叱る、ということはできるだけ避けるようにします。

年齢別の注意点

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2歳までの子どもを叱るとき

2歳ぐらいまでの子どもは、まだ十分な言葉の理解力がありません。ですから叱るときには1〜3語までの間の語数におさめるのが理想です。この場合には理由まで説明できなくてもかまいません。

3〜5歳の子どもを叱るとき

3歳を超えれば、4語以上の複雑な文章が理解できるようになってきます。この場合は、いけない理由を具体的に付け加えながら叱るようにしましょう。感心が人の心に及ぶようになるので、「先生悲しい」「嬉しいよ」などの感情語を混ぜるのも効果的です。

発達障害児に伝わりやすい叱り方は定型発達の子どもにも伝わりやすい

発達障害児の保護者さんを中心に大きな支持を集めた「声かけ変換表」という画像があります。上で説明した内容をさらに突き詰めて具体的にしたような内容で、とてもわかりやすい、子どもに初めて言いたいことが通じた、などと感激の声が多く集まっています。

最近の教育現場では、「発達障害児に伝わりやすい言葉かけは定型発達児にも伝わりやすい」という考え方が普及してきました。ぜひ一度、発達障害児向けの声かけについて学んでみてください。

「声かけ変換表」は以下で閲覧できます、個人・非営利での利用に限っては自由にダウンロードができます。参考になさってください。
声かけ変換表 – 発達障害 アイデア支援ツールと楽々工夫note

※講座での利用・配布、ネットでの利用などに関してはページ内の注意書きをよくお読みください。

編集者より

いかがでしたか?今回は保育園での子どもの叱り方についてお届けいたしました。子どもの問題行動の理由を理解し、伝わりやすい叱り方ができるようにしましょう。あなたが指導の中で今までよりも効果の出せる叱り方ができるようお祈りいたしております!

参考資料

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