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保育園で働いていると、保護者さんからクレームを受けることも多いと思います。そのなかでも、感情的になってしまっている方の対応に困ったことはありませんか?こうしたケースのうち一部の悪質なものが、「モンスターペアレント(モンペ)」と呼ばれて話題にもなっています。今回は、カウンセリングの技術を応用した、保護者さんなどからのクレームに上手に対応するコツを前後編に分けてお伝えいたします!

クレームを受けたときの対応のコツ

カウンセリングの技術を応用して、相手の気持ちを上手に受け止めていきましょう。うまく気持ちを受け止めることができれば、トラブルを防げる場合もあります。

まずは個室に案内を

園にクレームを伝えにいらした方がいらっしゃる場合は、まずは個室に案内しましょう。

ほかの関係者や園児の目があるところだと、相手もあなたも落ち着いて話ができません。また、相手が感情的になっている場合、「周囲に見せてやる!」となって攻撃的な言動がエスカレートしてしまう場合もあります。入り口などでそのまま対応していると、相手の方が「軽んじた対応をされている」と感じてさらに腹を立ててしまう場合も。

周囲の目やザワザワから離れた落ち着いた場所で、双方落ち着いて話ができるようにしましょう。

柔らかいソファなどに座ってもらう

テルアビブ大学社会科学部心理学科教授タルマ・ローベル氏は、「人はそのときに感じている触覚が会話相手に対する印象を左右する可能性がある」という説を唱えています。

ローベル氏の説に従うと、「柔らかい椅子に座って柔らかい触覚を感じている人は、会話の相手のことも『柔らかい人柄の人だ』という印象を持つ」ということが言えます。

相手に座ってもらう椅子は、できるだけ柔らかくて快適な感触のものにしましょう。これだけでも、相手の怒りやイライラが少しおさまるかもしれません。

斜めの位置関係に座ってもらう

人は本来、あまり真正面から見つめられつづけるとストレスやプレッシャーを感じやすい生き物だそうです。

いっぽうで、真正面から顔を合わせないように、少し斜めから90度ぐらいの位置関係をとるようにすると、リラックスし、相手への警戒心を解いて本音を吐露できるようになります。

取調室やカウンセリング機関ではこの傾向を利用しています。

取調室:
正面から見つめつづけてプレッシャーを与え、自白させやすくする

カウンセリング機関:
斜めから90度の位置関係で相手をリラックスさせて本音を語らせる

クレーム対応をするときは、ぜひカウンセリング機関のやりかたをマネしてみましょう。

相手の感情をまるごと受け止める

クレームを言いに園までいらっしゃる人はたいてい、「腹立たしい気持ちを受け止めてもらいたい」という状態になっています。まずは受け止めることに専念しましょう。

受け止めることで相手の気持ちが落ち着いてきます。そこから「ではどうしたらよいのか」という改善案の話に移ることができるのです。

「全身全霊で聴いていますよ、受け止めていますよ、共感していますよ」というメッセージを、身体のしぐさも総動員して伝えましょう。

浅く腰かけて前のめりになる

椅子やソファなどに浅く腰掛けて前のめりになることで、相手の話に関心を持っていることを伝えるようにしましょう。

視線を合わせる

常に目を見つめていると威圧感を与えることがあるので、基本的には伏し目がちにしておき、相手が感情を爆発させているときにしっかり目を合わせて聴きます。

真剣な表情にする

クレームを受けているときにヘラヘラ笑うような人はいないと思いますが、真剣で神妙な表情をくずさないようにしましょう。何かムッとくるようなことを言われても、その感情はできるだけ顔に出さないように。

ボディーランゲージで語る

大きくあいづちを打つ、深くうなずくなどの「聴いていますよ、受け止めていますよ、共感していますよ」サインをたくさん出しましょう。

ミラーリングをする

これは少し難しいので、余裕がある人だけやるといいのですが、相手と同じしぐさをすることを「ミラーリング」と言います。

相手が飲み物の入ったカップを手にとったら自分も同じようにする、相手が髪を触ったら自分も触る、悲しそうな表情をしたら一緒に悲しそうな表情をする…このようにすると、相手が親近感と信頼感を持ってくれやすくなると言われています。

相手の発言をくりかえす

発言をくりかえして言うと、人はその発言を「聴いてもらえた、受け止めてもらえた」と感じやすいです。例えば

相手:「腹が立つ!許せない!」

あなた:「腹が立って、許せないとお感じなんですね」

このように、相手の発言を繰り返して言いましょう。

「私も同じ立場だったらそう感じると思います」

「相手の立場だったら同じ思いになる」と伝えることも効果が高いです。

相手:「Aちゃんにいじめられたのに先生たちが助けてくれなかったってうちの子が言ってる。不安になっちゃったわよ!」

あなた:「お子さんからお聞きになった話で不安になられてしまったんですね。私も同じ立場だったらそう感じると思います」

ただし、これはあなたが本心で「私がこの人だったらそう思う」というときだけ使ってください。自分の気持ちに嘘をついてまで相手に合わせる必要はありません。

事実関係に関しては「きちんと調べてからお答えします」と保留を

相手の「感情」はすべてその人が感じた事実ですから、丸ごと受け止めるべきです。しかし、「何がどうなった、誰がこうした」という事実関係に関しては、きちんと調べることなしに「そのとおりです」と答えてはいけません。

相手を肯定しろと言われると、「相手の言うことを全部受け入れてひたすら謝らなければいけないのか」と思う人もいると思いますが、あなたがクレーム対応で受け入れなければいけないのは、相手の「感情」だけです。

例をあげて説明してみます。

相手:
「腹が立つ!許せない!」(感情)

あなた:
「腹が立って、許せないとお感じなんですね。そのようなご不快なお気持ちにさせてしまい申し訳ありませんでした」(感情を受け止める)

相手:
「Aちゃんにいじめられたのに先生たちが助けてくれなかったってうちの子が言ってる。おたくの園はいじめを放置するような園なんですか?」(事実関係)
「こんな園、不安でうちの子を入れていられないわ!」(感情)

あなた:
「お子さんからお聞きになった話で不安になられて、うちの園にはお子さんを入れていられないとお思いになったんですね。そんなお気持ちにさせてしまい本当に申し訳ありません」(感情を受け止める)
「いじめや保育士の対応についてはきちんと事実関係を確認してからお答え申し上げますので、申し訳ありませんがしばらくお待ちください」(事実関係を保留する)

以上のような感じで、受け止めるのは感情だけにし、確認できていない事実関係については慎重に保留の態度を貫きましょう。

時間と手間をとって出向いてくれたことに感謝する

たとえその人の訴えている内容が事実無根の悪質なクレームであったとしても、「わざわざ手間と時間をとって園まで出向いてくれた」ことは事実です。この点に関しては、はっきりと感謝を述べましょう。

「わざわざお時間をおとりいただいていらしていただき、本当にありがとうございます」といったような形にします。このようにすると、「怒られているにも関わらず礼まで言っている」という控えめで良い印象を与え、相手の態度が柔らかくなる可能性があります。

「あなたがたのためを思って言っているのよ!」などの発言があったときも、「私どものためを思っておっしゃってくださり、ありがとうございます」とお礼を言うとよいです。

感謝の気持ちを伝えられる場面ではしっかり伝え、話し合いを円滑に進めていきましょう。

以上、前編ではカウンセリング的なクレーム対応の方法をお伝えしました。イメージがわきましたでしょうか?後編では、園側を守るための対応のコツ、クレームを未然に防ぐ普段からの対策についてお伝えいたします。

後編はこちら。
カウンセリング技術を応用!保護者クレームへの対応のコツ(後編)

参考資料

法テラス|法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ
赤を身につけるとなぜもてるのか? タルマ・ローベル
ソファに座らせると交渉しやすい? 触覚が思考や行動に与える影響 | ライフハッカー[日本版]
イライラしたら試してみよう!優しい気持ちを取り戻せる方法って? | 4yuuu! (フォーユー) 主婦・ママ向けメディア
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