保育の基礎知識

【5歳児との接し方】~小学校へ向けて~自ら考える力を育むかかわり方とは?

卒園や小学校への入学も見えてくる5歳児
友だちとの関わりの中で社会や集団のルールを理解したり、保育園で年長クラスのお兄さん・お姉さんとして扱われたりしながら、少しずつ成長のステップを登っていきます。

毎日の生活において身の回りのことをひと通りできるようになるなど、自分自身でできることも増える5歳児ですが、これから小学校に上がるうえで自ら考えて行動する力をつけていく必要もあるでしょう。

今回は、保育園生活の締めくくりとなる「5歳児」との接し方のポイントをご紹介します!

5歳児の基本情報【身長・体重】

草花のイラスト

厚生労働省が発表している「平成22年度 乳幼児身体発育調査」では、5歳児の身長・体重のおおよその目安が紹介されています。

5歳(0~6ヶ月)の成長目安
男子 身長:100.5cm~116.5cm(中央値:108.0cm)
体重:14.37kg~23.15kg(中央値:17.56kg)
女子 身長:99.1cm~114.8cm(中央値:107.3cm)
体重:14.01kg~22.69kg(中央値:17.32kg)
5歳(6~12ヶ月)の成長目安
男子 身長:103.3cm~119.9cm(中央値:111.3cm)
体重:15.03kg~24.33kg(中央値:18.63kg)
女子 身長:101.6cm~118.2cm(中央値:110.6cm)
体重:14.81kg~24.22kg(中央値:18.27kg)

体重の増加は比較的ゆるやかですが、身長は6歳までに6cm程度伸び、すらりとした学童体型に近づいていきます。

それでは具体的に、5歳児になるとどんなことができるようになるのかを見ていくホィ!

発達①バランスを取る能力が向上する

5歳児の発達の特徴としてまず挙げられるのは、体力や筋力のほかバランスを取る能力が発達して、より複雑な動きが可能になるということ。

平均台を渡ったりブランコの立ちこぎをしたりと高度な運動遊びもできるようになり、歩くスピードも大人とほとんど変わらなくなるでしょう。

5歳児ができるようになること(目安)
  • 歩く速度が大人とほぼ変わらなくなる
  • ブランコの立ちこぎができる
  • スキップが上手にできる
  • 平均台などの細い場所をバランスを取りながら渡れる
  • 向かい合ってボールを蹴る・投げることができる
  • ジャングルジムを上まで登ることができる
体を外で思いっきり動かして遊ぶことで、運動能力をさらに高めることや、「どんなことをしたら危険なのか」を学ぶことにつながっていくよ!

発達②手先がさらに器用になる

物語の世界

手先の器用さも、4歳のときより向上します。
ハサミを上手に使いこなして直線・曲線などを自由に切ったり、ホチキスやスティックのりなども用途に応じて適切に使い分けられるようになるでしょう。

5歳児ができるようになること(目安)
  • ハサミで直線や曲線などを切ることができる
  • ホチキスやのりなど、道具の用途を正しく理解して使える
  • リボン結びや固結びをすることができる
  • 〇△□などの図形が描ける
  • 人間の顔や体などが描ける
  • 体験を絵画で表現することができる

発達③身のまわりのことはほぼ自立!

着替えや歯磨き、トイレ、服をたたむ、おもちゃを片付けるなど、身のまわりのことは大体ひとりでできるようになります。

箸を使ってこぼさずに食べることもできるようになるほか、食事のマナーやルールを守れるようにもなります。
生活習慣の面では、ほぼ自立していると言えるでしょう。

5歳児ができるようになること(目安)
  • 箸を正しく使ってこぼさずに食べられる
  • 食事をこぼすなどしたら自分で拭くことができる
  • 決められた時間、離席せずに座って食事ができる
  • 靴をそろえて下駄箱にしまえる
  • ほうきや雑巾が使える
  • 保育園の身支度を自分ですることができる
  • かんたんなお手伝いができる
自分や周りの状況に気づいて、臨機応変に対応できるようになってくるよ。

発達④友だち同士のおしゃべりも楽しい

手話

言語能力や記憶力もさらに発達し、自分の意思をきちんと文章にして相手に伝えることができるようになります。

お友だちと同音語を使った言葉遊びやなぞなぞ、ダジャレ、しりとりなどの言葉遊びを楽しむこともできるようになってきます。

5歳児ができるようになること(目安)
  • ひとつの話題をテーマにおしゃべりができる
  • ダジャレや冗談など、言葉をつかってユーモアのある会話ができる
  • 自分の意志を文章にして伝えることができる
  • 自分の名前や年齢、住所や両親の名前などを答えることができる
  • 「どうして?」の質問に対して、その理由を答えることができる
  • 想像力をはたらかせて、お話を創作することができる
  • 絵を見て擬態語や擬音語で表現ができる

発達⑤理解力・記憶力がアップ

図形や位置、色、話の内容などを理解し、同時に記憶できるようになります。
論理的な思考や判断、推測などの能力が劇的に伸びるので、複雑な指示に従うことも徐々にできるようになるでしょう。

また曜日や時間、数などの考え方、「大きい・小さい」など比較概念への理解が深まるなど、5歳頃の知能はめざましく発達していきます。

5歳児ができるようになること(目安)
  • 時間や曜日の概念が理解できる
  • 「大きい・小さい」「重い・軽い」など比較ができる
  • 数的理解力がついて、ある程度の数を数えることができる
  • 数個の違いでどちらが多いか・少ないかの判断ができる
  • 文字の読み書きに興味を示す子もいる
  • 理解したことを長期間記憶できる

発達⑥社会性が育つ

ふれあい

自身の経験や学びから、他者を見て感情を想像することができるようになります。
自分の欲求を押しとどめ、ルールに従って遊ぶなど、感情のコントロールもうまくできるようになってきます。

また自分の要求だけでなく、友だちの要求も理解できるようになり、友だちの必要性を認識します。
同時に、自分よりも小さい子や高齢者などに対して、思いやりの心を持てるようにもなります。
相手の気持ちを考えたうえで、自分自身の行動を決めることができるようになってくのです。

そのほか、道徳の理解が徐々に進むため、公共の場でのマナーを意識できるようになるでしょう。

ここまで5歳児の心身の発達の目安をご紹介してきたけど、発達には大きな個人差があるよ。
できないことがあっても、「これができないのはおかしい!」と神経質にならないよう気をつけよう。
ただし「じっとしていることができない」「呼びかけに反応を示そうとしない」など、気になる行動が顕著にあらわれる場合は発達障害が隠れている可能性あるホィ。
そのケースだと適切な支援を行う必要があるから、注意深く見守っていくことが大事だホィ!
アイキャッチ_水野智美先生①
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5歳児との接し方で大切な3つのポイント

子どものイラスト

5歳児は「幼児」から「小児」となる、いわば過渡期。
その関わり方には、忘れてはならない大切なポイントが3つあります。

①「自分で考える力」を育もう!

この時期の子どもたちは、ものごとや人と主体的に関わることで「考えて発言・行動する力」を身につけていきます。

積極的に人と関わる機会を設けるとともに、子どもたちの考える姿を十分に認めてあげて、ときにはサポートしてあげましょう。

さまざまな人と触れ合う機会を作ろう

同年齢の子どもたちはもちろん、異年齢の子どもたちや地域の人との交流の中で、5歳児はその場にあった立ち振る舞いや人との接し方を学びます。
さまざまな立場の人と交流する機会があることで、子どもたちは多くの経験と「考えるきっかけ」を得られることでしょう。

最近は保育園の中で縦割り保育の時間を設けたり、小学生との交流の機会を作ったりしているところも多くありますね。

子どもの力を信じてあげよう

保育士さんが手を出さなくても、子どもたちだけでできること・任せられるところは委ねるようにしましょう。
たとえひとりではできなくても、子ども同士で協力しあうことでできることもあります。

「どうしたい?」「どうしたらよいと思う?」と質問を投げかけながら、自分自身の力で問題を解決したり、課題を達成するために試行錯誤したりする機会をたくさん設けてあげるといいですね。

思いやりの心を育もう

この時期は高齢者や障がいなどのハンディキャップを抱えた人、自分よりも小さい子どもたちに対する思いやりの心を育むのにも適しています。

「○○してあげると喜ぶんじゃないかな?」「どうしてあげたら嬉しいと思う?」とヒントを与えながら、子どもたちに考えさせることで、他者の心に対する理解や想像力・優しい気配りなどを徐々に学ぶことができるでしょう。

②大人の理不尽や矛盾を押し付けない!

5歳頃の子どもたちは大人の行動をよく見ています。また、ものごとに対する理解力や洞察力もかなり身についてきています。
きちんと説明をしないで大人の都合を無理やり押し付けたり、理不尽な状況を作り出してしまうことは、子どもたちからの信頼を損ねる要因となってしまうでしょう。

まずは大人がルールを守って!

5歳頃は公共の場でのふるまい方や、交通ルールなども身に付けていく段階。
にもかかわらず、指導する大人が肝心のルールを守っていないようでは説得力がありません。

「大人だから特別なの!」など、何かと理由をつけてルールを無視したり例外を作ったりするのはやめましょう。

叱るときにもきちんと理由の説明を

やってはいけないことをした子を叱る場面でも、一方的に「ダメ!」と叱るのは子どものためになりません。
「なぜいけないのか」理由をきちんと説明して、子どもたちが理解できるように心がけましょう。

子どもたちにとって、保育士さんは保護者の次に身近な存在。
先生と園児がお互いに信頼関係を保つことは、子どもたちが安心して成長し、園生活の締めくくりをよりよいものにするためにも不可欠です。

③小学校での生活を意識しよう!

保育園を卒園したら、いよいよ小学校入学です。

小学校と保育園とでは、生活パターンも取り組む内容もがらりと変わります。
子どもたちが就学後に戸惑ってしまったり、うまくいかずに悩んでしまったりすることがないよう、保育園にいる段階から小学校での生活を意識しておく必要があるでしょう。

時間を意識した行動を心がけよう

「過去」「現在」「未来」の概念がきちんと理解できるようになる5歳児。
日々の保育の中でも、先の見通しを持って動くことが必要となってきます。

小学校に上がれば、決まった時間に決められたことをこなさなくてはならなくなります。
食事の時間をある程度目標として決めてみる、「〇時になったらお部屋に入ろうね!」と声掛けをして時間の感覚を養うなど、時間の意識した保育を心がけてみましょう。

文字や数字の学習に焦らない

ものを覚えるタイミングは子どもによってまちまち。
この時期にすでに読み書きや数の理解が進んでいる子もいますが、まだまだ関心を示さない子もいるでしょう。

文字を書いてみるなど「興味を持たせるような取り組み」は大切ですが、無理に反復練習をさせることは保育者にとっても子どもにとってもストレスとなってしまいます。
文字や数字に抵抗感を抱いてしまわぬよう、生活の中で関心が持てるような働きかけをしましょう。

「褒める」ことで自己肯定感を高めよう

これから新たな世界に飛び込んでいく子どもたちにとって大切なのは、「自分は認められている」「自分にはできるんだ」という自己肯定感を持つこと。

子どもたちが何かをやり遂げたときには、ぜひしっかりと褒めてあげましょう。
小さな進歩であっても取り上げて、努力を認めてあげることが、子どもたちの自信につながります。

保護者へのフォローも忘れずに!

子育てをするパパ・ママにとっても、我が子の小学校入学は不安なものです。
時には悩みを聞いたり、家庭での過ごし方に助言をしたり、保護者支援の視点も忘れずに持っておきましょう。

要注意! 5歳児にしてはいけないNG対応

保育士

ここまで「5歳児との接し方のポイント」をお伝えしてきました。
それでは逆に、どのような対応はダメなのか、改めてまとめてみましょう。

子どもが「自分で考える」のを邪魔する

  • 子どもの意思や考えに耳を傾けない
  • 子どもの考えを否定する
  • 子ども同士のトラブルをすぐに仲裁してしまう
  • 子どもが考えてやろうとする前に「やってあげて」しまう

など

大人の都合を押し付けたり、子どもの考え方や行動を頭ごなしに否定してしまうことは、子どもたちの自主性の芽を摘んでしまうことにつながりかねません。
日々の保育でも無意識にそのようなかかわりになっていないか、十分に注意する必要があるでしょう。

子どもからの信頼を損なう

  • 大人がルールを守らない
  • 子どもとの約束を破る
  • 理由を説明せずに叱る
  • 理由を説明せず、強制的に何かをやらせようとする

など

子どもたちにとって、保育園の先生は「目指すべきお手本」。
ルールやマナーを教える立場である保育士さんが、自分ではそれを守っていない……なんて台無しです。

子どもはよく大人の様子を見ているもの。5歳にもなると、嘘やごまかしも何となく感じられるようになります。
信頼関係を壊さないためにも、日々の保育も誠実に対応しましょう。

小学校の「勉強」だけに目を向ける

  • 数や文字を覚えることを強要する
  • できることを比較して、他の子どもと優劣をつける
  • 表面的な学習のみに注力する

など

小学校の入学を意識した取り組みにばかりに囚われて、保育本来の目的を見失ってはいけません。
表面的な「学習」をさせる、ものごとを「覚えさせる」だけではなく、子どもの成長を見守って支えるという視点を忘れないようにしましょう。

えんぴつやお箸の持ち方、文字の読み書きなど……完全にできていなくても焦らないで見守ってあげようね!
子どもたちが興味・関心を持って、主体的に取り組めることが大切だホィ!

5歳児にオススメの遊び・絵本

女の子

5歳になると、ルールのある集団遊びを楽しむことができるようになります。
ときには子ども同士で話し合いながら、独自のルールを設ける姿も見られるでしょう。
戸外では、ダイナミックに体を思い切り動かせる遊びを取り入れていきましょう!

おすすめの戸外遊び

  • ドッジボール
  • 自然を活かしたごっこ遊び
  • かくれんぼ
  • アレンジ鬼ごっこ
  • だいこん抜き

ボールをある程度定まった方向に投げたり、蹴ったりすることもできる5歳児。
力の加減もできるようになってきますので、ドッジボールやサッカーといった球技もおススメです。

また定番の鬼ごっこには、「タッチされたら〇〇になっちゃう!」とアレンジのルールを追加してみるのもよいでしょう。

おすすめの室内遊び

  • 連想ゲーム
  • ブロック遊び
  • 絵しりとり
  • 伝言ゲーム
  • ごっこ遊び

室内でも、みんなで簡単なルールに沿って楽しむ遊びがオススメ!
「リンゴといったら……?」「赤い! 赤いと言ったら……?」と続く連想ゲームや、みんなでひとつのものを作り上げるブロック遊び、大きな模造紙へのお絵かき、言葉の代わりに絵で表現する絵しりとりなど……みんなでワイワイ楽しめる遊びがたくさんあります。

ごっこ遊びも少し発展させ、集団で楽しめみながら、卒園後の生活を疑似体験できるような企画してもおもしろいでしょう。
たとえばお店屋さんごっこ。子どもたちそれぞれがお店を構え、おもちゃのお金でやりとりをすることで、お金の使い方や数の概念などを学ぶきっかけになりますね。

編集者より

ほとんどのことを自分でできるようになる5歳児。
まだほんの子どものように見えても、「人の心を読み取り、大切にする」という社会性の基礎はしっかりできあがりつつあります。

子どもたちには、優しい心を持って、立派に社会に羽ばたいていってほしいもの。
保育園での締めくくりの1年間にはそんな願いを込めて、ぜひ子どもたちにたくさん考える体験をさせてあげたいものですね。

参考文献・サイト

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