待機児童問題とは?解決への取り組みは?改めて押さえておこう
読了の目安:約4分49秒

保育士さんたちは「待機児童問題」の真っただ中で働いているわけですが、日々現場に追われるなか、「よく考えたら待機児童問題の全体像をよくわかっていない」という人も多いと思います。待機児童問題について詳しく知っている人も知らない人も、いま一度改めて押さえておきましょう。

待機児童の定義

待機児童とは

待機児童の広い意味での定義とは、おおまかに言うと「保育施設に入所したいけれど入所できずにいる子ども」のことです。

厚生労働省による現在の定義では上の条件に、「保育施設に申し込みをしている」という条件が加わります。

「隠れ待機児童」の存在

待機児童の広い意味の定義では、「入所したいけれど入所できない」の部分の解釈が自治体ごとにバラバラです。また、厚生労働省の定義は実際に困っている人の状況を反映したものとは言えず、かなり狭い範囲のものとなっています。「保育施設に入れそうもないので保護者が働くのを諦めた」「復職したいけれど入れる保育施設が見つからないので育休を延長した」などといった家庭のケースは除かれてしまうからです。

このため全国的に、実際には保育園に入れなくて困っているのに待機児童にはカウントされない「隠れ待機児童」の数が膨大になってきていると言われています(一部報道では、隠れ待機児童の数は統計上の待機児童の数の3倍程度とも)。これを受けて厚生労働省は、2017年3月末までに対象を広げた新しい基準を決める予定です。

詳細は以下の記事で解説されています。
厚労省:待機児童を再定義…「隠れ」の算入焦点 – 毎日新聞

全国の待機児童の現状

最新データにみる傾向

最新データにみる傾向

最新の厚生労働省のデータから読み解ける、待機児童周辺の動向は以下のとおりです。

●地方では保育定員の足りているところが多いが、首都圏や大都市圏で需要に対し保育定員が足りていない。

●保育定員はさまざまな施策によって増えてきているが、待機児童問題は一向に改善していない。理由は大まかに2つ。

1.女性が家計のために働かざるをえない社会状況が進む中で、想定外の勢いで待機児童が増えている

2.待機児童問題が広く認識され、定義が広くなるにつれてそれまで見えなかった待機児童がどんどん顕在化してきている

詳細のデータは厚労省のこちらのページから参照することができます。
保育所等関連状況取りまとめ(平成28年4月1日)及び「待機児童解消加速化プラン」集計結果を公表 |報道発表資料|厚生労働省

都市圏と地方圏の待機児童の傾向の違い

首都圏や大都市圏では「保育定員に対して子どもが多い」という形で待機児童が出るケースが多いです。一方、地方で待機児童が多いところでは、「過疎化で保育園が減った結果、保育園に入園しづらくなる」という背景があります。

沖縄は地方圏ですが、厚労省のデータで見ると、東京都並みに待機児童問題が深刻です。保育所の整備が遅れたこと、賃金が低い傾向のため働く女性が増えたこと、出生率が高いことなどが原因として指摘されています。

待機児童問題への取り組み

国による施策

国による施策

首相官邸による保育の3本柱

首相官邸のこちらの記事によると、待機児童問題に関する国の最新の施策は、「保育の受け皿を増やす」「保育を多様化する」「保育人材を確保する」の3本柱となっています。

待機児童対策~これからも、安心して子育てできる環境作りに取り組みます!~ | 首相官邸ホームページ

1.保育の受け皿を増やす
保育定員を増やす、ということです。

今後さらに女性の就業が進んでいくことを念頭に、「待機児童解消加速化プラン」の目標をこれまでの40万人分から10万人分上積みして、平成29年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保することとしており、認可保育園等の整備により、受け皿の確保にしっかりと取り組んでいきます。

また国では、保育園開設のための財政支援にも力を入れる予定です。

 
2.保育を多様化する
さまざまに事情の違う保育需要に応えるため、いろいろな形態の保育を充実させていくということです。

認可保育園や認定こども園に加えて、少人数での保育、企業内の保育園の充実にも力を入れていきます。また、一時預かり事業や病児保育事業など、子育てをされる方の様々な悩みに応える支援も充実させていきます。

 

3.保育人材を確保する
国では、十分な保育定員を確保するためには保育士が9万人程度足りないとしています。保育士の数を確保するため、以下のようなさまざまな財政支援を行います。

・いったん仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の拡充
・保育士の勤務環境改善に取り組む事業者に対して、保育補助者を雇用する資金の拡充
・保育園等に勤務する保育士が自分の子どもを保育園等に預ける場合の利用料支援

保育士さんがより働きやすい環境を用意し、潜在保育士の人たちにも保育に復帰してもらおうという取り組みです。

内閣府による新しい案

内閣府の「子ども子育て会議」でも、保育士数確保のために保育士さんのお給料を改善する案が具体化してきています。

現時点ではあくまで案なので、詳細は参考程度にこちらの記事をご参照ください。
【速報】本日公表の「保育士の給料改善」案を解説します | 駒崎弘樹

東京都による新しい施策

新しく都知事に就任した小池百合子氏は、待機児童対策のために1400億円近くの予算を組み込みました。小池氏は、2020年3月末までに待機児童をゼロにするとの目標を立てています。

特に話題を呼んでいるのが保育士の給与上乗せで、東京都では新しい制度で保育士1人当たり4万円強を上乗せする予定です。

今までに類を見ない大幅な給与上乗せは高く評価されるいっぽうで、「保育士人材が周辺自治体から都に流出するのではないか」との懸念も出ています。

詳細はこちらの記事で解説されています。
東京新聞:小池都知事、初の予算編成 待機児童対策1380億円:社会(TOKYO Web)

さまざまな施策が動き始めている

待機児童問題の解消のカギは、潜在保育士の解消だと言われています。保育士有資格者のうち現在現場で働いている人の数は、3割〜4割程度しかいないとも言われているからです。有資格者のほとんどが現場で働けるようになるだけで、保育能力は単純計算で現在の2〜3倍程度になるわけです。

潜在保育士解消の近道の一つは、姉妹サイトのこちらの記事でも触れられているように、大幅な給料アップだと考えられます。

約4万円上乗せという東京都の新しい保育士給与額は、保育士さんたちが実際に必要としている額には足りないものの、かなり思い切ったものです。

さまざまな施策がどんどん動き始めていますので、今後も国や自治体レベルでの動向に注目していきましょう。

友だち追加
保育のお仕事