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2016年、「保育園建設・開設反対運動」が話題になっています。朝日新聞の調査では、2016年4月に開園予定だった保育園のうち、「住民との調整」を理由に開園が中止・延期されたものは15自治体で計13園あったとのことです。全国で反対運動が広がるなか、保育園で働く保育士さんたちはどうすればいいのでしょうか?今回は、反対運動増加の背景や実態について考えたうえで、保育園を地元住民のみなさんに受け入れてもらいやすくするためのコツを紹介します。

全国で保育園反対運動が広がっている

2016年に入って、保育園建設・開設反対運動についての報道が話題を読んでいます。

住民反対で中止・延期、13保育園 自治体待機児童調査
朝日新聞社が全国の主要82自治体に実施した待機児童調査で、今年4月に開園予定だったのに中止・延期された認可保育所などが、15自治体で計49園あったことが分かった。このうち「住民との調整」が理由だったのは、7自治体で計13園あった。子どもの声や車の通行量増加などへの懸念から住民が反対し、自治体に十分な説明を求める動きが広がっているようだ。
―保育園の開設、地元住民の反対で13カ所が中止・延期 「以前はあまり聞かなかった」 – ハフィントンポスト

上のハフィントンポスト配信の朝日新聞記事によれば、中止・延期となった園があるのは千葉県市川市、東京都台東区・世田谷区・調布市、神奈川県横浜市・茅ヶ崎市、大阪府豊中市。関東に偏ってはいるものの、反対運動が広く広がってきているりつつあることがわかります。

保育園に反対する住民は「自分勝手で冷たい人たち」?

ネット上では反対運動増加の現状に対し、「大人もみんな自分だって以前昔は子どもだったのに、冷たい、心が狭い!」といった強い憤りの声も散見されます。しかし、彼ら反対住民は本当に自分勝手で冷たい人たちなのでしょうか?少し考えてみましょう。

報道が対立をあおっている?

Yahoo!ニュースに、「東京都杉並区の件の報道では、メディアにより切り取り方が大きく違う」とのレポートがありました。

一部の局の伝え方は、明らかに意図ある切り取り方をしていると感じた。他がすべてそうだったのではなく、一つの局だけが偏っていたと思う。
火曜日の記事にも書いたが、保活中の母親へのヤジも規定の時間を大幅に超えて注意されても話し続けたからだった。でもヤジの部分だけを切り取ると、保活ママを攻撃する冷酷な人びとに見えてしまう。そんな伝え方をしたテレビ局は、はっきり言って誤っている。悪意があったのかと疑いたくなる。
―杉並区の保育園問題。訴えたいのは、誰かを悪者と決めつけて、確かめもせず攻撃するいまの風潮。(境治) – Yahoo!ニュース

また、Twitterを中心に「千葉県市川市の件の報道では、『子どもがうるさいから』という反対理由ばかりが強調されて伝えられている」との声も多く見つかります。下の記事内には、実際のツイートがたくさん収録さまとめられています。

どうもメディアの一部で、「保育園に反対する住民は心の冷たい悪人」というイメージを伝えたいというのが先にあって、それに沿った切り取り方で報じるところが出ているようにも思えまです。「保育園落ちた日本死ね」というブログ記事が国会に取り上げられるほどの話題になった流れ上、保育園の話題に関して人の感情をあおるような報じ方をすればより注目をが集まるかもめられる、という意図がメディア側にあるようにも見えます。

目指すゴールを見失わず、情報は冷静に吟味を

私たちが社会全体として目指すべきゴールはなんでしょう。違う意見もあるとは思いますが、特に保育士さんには、「子ども、女性、高齢者、障害者などの弱者と共生できる社会」がゴールでは、という考えに同意してくれる人も多いと思います。

一部のメディアの一部は、より多くの注目を集めるため、子どもと社会、女性と社会、高齢者と社会などをわざわざ、本来歩み寄りあうべき人たちをわざわざ対立させようとしているようにも見えます。こうした中で私たちに必要なのは、本来のゴールを見失わず、情報を冷静に吟味する態度なのではないでしょうか。

何か感情を刺激されるような報道や情報があったら、とっさに反応してSNSなどに書き込んだりするのではなく、その話題についてのせずに複数の報道や情報をあたってみましょう。何か違ったものが見えてくるかもしれません。

保育園反対運動は「誰のせいでもない」

保育園反対運動が起きた背景を詳しく調べていくと、この現象は「市民の誰かが悪いわけではなく、社会の変化の流れのなかで起こるべくして起こったもの」ということがわかってきます。

リーマン・ショックや東日本大震災を経て、日本の経済状況は高度経済成長期と比べると厳しくなりました。このせいで、男性の収入が下がり、共働きが必要になる家庭が増えました。かつては一家を支えることのできていた男性の収入も下がってしまう。同時にもっと長いスパンではまた、核家族化が進みつづけ、んだ結果、家庭で子どもをみる土壌もが失われていきていっていました。結果、家計のために子どもを保育園に預けてでも共働きしなければならない家庭がグッと増えたわけです。

ここでこういった背景があり、待機児童の問題が起きました。「保育園落ちた日本死ね」も話題になり、国や自治体はいよいよ必死に保育園を増設しようとします。しかしが土地が足りません。そこで、今までだったら使わなかったようなと候補に挙がらなかったような土地までが建設候補地に上挙がるようになり、国や自治体はそれに飛びつくような形で保育園を急ごしらえしようとしますました。

しかし、同時に日本では、やはり長いスパンで、日本では都市化による地域コミュニティの希薄化が進んでいました。自由に遊べる空き地が少なくなり、街から子どもの姿が消える。このなかで、子どもを対象とした犯罪が大きく報道されたのもあって、大人や高齢者と子どもたちの地域でのつながりも消えていきました。子どもと社会が分断され、大人の生活の中から子どもたちの存在感が消えてしまったのです。

こうしたなか中て、自分の居住地域に保育園建設の話があがると、生活圏内に子どもがいる生活が想像できないため、「寝耳に水」のような気持ちになる地域住民が増えるわけです。彼らが「ちょっと待って」「静かな老後を送ろうと思っていたのに」「納得のいく説明をして」と反対意見をあげるようになったとしても、これは不思議ではないように思います。

保護者も子どもも困っているし、周辺住民も困っています。国民みんなが、言ってみれば時代や社会の流れの被害者だともいえます。なんとかして歩み寄りあい、理解しあってよりよい策を探していきたいものですよね。

地域と積極的に交流する機会を持とう

積極的な話し合いを

3年前に新しく作られた東京都世田谷区の保育園では、園側と地域住民との間で1年の話し合い期間を持ちました。繰り返しの話し合いのなかでお互いの間の妥協点を探り、何度も計画の調整を行なった結果、めでたく開園にこぎつけたのです。

この保育園では、住民の方からの訴えに応え、以下を含む7ヶ所にも及ぶ計画変更をしていきました。

子どもがうるさい→ 園庭の位置を変えて道路に面しないようにし、声が外に響きにくいように
日当たりが悪くなる→ 敷地を掘り下げて建物を低く

繰り返しの話し合いを持って実際に計画変更に踏み切るだけでなく、話し合いの場に園長や保育士が積極的に関わっていたことが、地域住民に好感を与えたようです。

住民たちは、自分たちの意見に耳を傾ける姿勢に好感を持ち始めたといいます。
さらに住民たちの心を動かしたのは、話し合いの場に建設予定の保育園の園長や保育士が率先して参加していたことでした。
―子どもって迷惑? ~急増する保育園と住民のトラブル~ | NHK クローズアップ現代

新しく保育園を建てるときだけでなく、建てたあとに地域住民の方とトラブルになったときにも、どんどん話し合いの場を持って互いの間の妥協点を見つけることが大事だといえるでしょう。

互いに「目に見える」関係に

反対運動が起きた背景の部分でも書いたように、子どもたちと大人・高齢者の地域的なつながりが薄れていることも、反対運動が増えてきた原因のひとつと考えられます。お互いが「見知らぬ他人」になり、互いに迷惑をかけあうことへの抵抗感が強くなってきつつあるのではないでしょうか。

この抵抗感をやわらげていくには、やはり互いに「見知った関係」として繋がりあうことが大事なのだと思います。

保育園ができることのひとつとして、子どもと地域住民の方の接点を増やすイベントの開催があげられます。たとえば、園を建てたあとにも定期的に地域住民の方を園に招いたり、逆に地域の施設にお遊戯会などで出向いたりして、「見たことある者どうし」「だから応援したい・見守りたい」という感覚を育てていくわけです。園を建てる前には、「こういうふうに地域住民の方と定期的に交流するイベントを予定しています」とお知らせするとよさそうですね。

セキュリティ対策の面で課題も多いと思いますが、地域との積極的な交流は、長期的に見てもやる価値のあることだといえるでしょう。

互いに助けあう関係に

園側や子ども側は居場所が少なくて困っていますよね。でも例えば、子どもは巣立ってしまったし仕事ももう定年した、という高齢者の中には、「地域の中に人と交流できる場がない」とか、「寂しい」といった苦しみを抱えている人もいるのではないでしょうか。こういった、もともと苦しみを抱えた人にとっては、子どものはしゃぐ声が拷問のように聞こえてしまったとしてもそれは自然なことではないかと思います。

心の苦しみは、強い怒りへのスイッチとなることがあります。こうした苦しみや怒りが、一部の人を激しい保育園反対運動に駆り立ててしまうことがあったとしても不思議ではありません。

ですから、できれば皆が互いに助けあえる関係になりましょう。たとえば、孤独な生活を送る人を可愛らしいお遊戯などの様子で元気づけ、「○○おじいちゃん!」「××のおばあちゃん!」と呼びかけたり、笑いかけてきたりするような子どもたちがたくさんいる保育園が近所にあったとしたら… そうしたおじいちゃんおばあちゃんの中に、「この保育園には反対だ!」という気持ちになるような人は少ないのではないでしょうか。

保育園を受け入れてもらって、園と子どもが助かる。保育園を受け入れることによって、地域住民が助かる。そんな構図を目指していきましょう。

編集者より

いかがでしたでしょうか。子どもや保育園が地域に受け入れられ、すべての住民が互いに繋がり、幸せに暮らせる社会を来させるべく、私たちなりにできることをやっていきたいものですね。

参考文献

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