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赤ちゃんにとって完全食とも言われる母乳。多くのメリットがあることから近年WHOなどでも見直され、病院や保育施設で母乳育児を推奨しているところも多いそう。しかし一方で正しい理解がされていない部分もあるようです。本日は母乳育児のメリットや注意点を正しく知るとともに、保育園で母乳育児を実践する際に気をつけるべき点にも着目してみましょう。

知ってる?母乳育児は母子両方にメリットがある!

哺乳瓶を持つ保育士と赤ちゃん
母乳には人口乳(粉ミルク)では得られないメリットがたくさんあります。またそのメリットは赤ちゃんにとってだけでなく母親にとっても大きいことが知られています。まずはおさらいとして母乳育児のメリットをチェックしてみましょう!

乳児にとってのメリット
1 【栄養のバランスがよい】
乳糖、脂肪、たんぱく質、カルシウム、ビタミン、ミネラルなど生後6カ月未満の赤ちゃんに必要な栄養素がバランスよく含まれている。
2 【消化吸収によい】
母乳のたんぱく質は半消化状態で腸にやさしく消化吸収によい。無機質が少ないため腎臓に負担もかけない。
3 【病気にかかりにくくする】
母乳には細菌やウイルスに抗体を持つ免疫グログリンIgAや、ビフィズス因子、殺菌性酵素のラクトフェリンやリゾチームが含まれているため感染抑制作用がある。
4 【アレルギーを起こしにくい】
免疫グログリンIgAが乳児の未熟な腸にはたらきかけ、アレルギーの原因となる異種たんぱく質の吸収を防ぐため、タンパク質アレルギーになりにくい。
5 【脳や運動神経の発達に役立つ】
あごや舌を使っておっぱいを吸う行為によってあごの筋肉が発達し、歯並びにも影響する。またあごを動かす刺激によって脳の発達も促すとされる。母乳には脳の発達に適した成分も含まれる。
6 【安心感を得られ母子関係が深まる】
体内で聞いていた母親の声や鼓動に触れることで安心感を得られる。
7 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク低減に役立つ】
乳児が睡眠時に突然亡くなってしまう原因不明のSIDS。そのリスクは母乳育児の方が低いとされている。

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SIDSに睡眠障害…まとめて知りたい!子どもの睡眠に潜む危険性

母親にとってのメリット
1 【母性が深まる】
乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンはおっぱいを吸われることで分泌され、母性の深まりに役立つ。
2 【産後の回復を早める】
脳下垂体からオキシトシンが分泌され子宮収縮を促す。また増加した体重の減少にもつながるともいわれる。
3 【乳がんなど婦人科疾患のリスク軽減】
排卵再開の遅延やエストロゲンという女性ホルモン分泌の関係から、授乳が乳がん予防に役立つとも言われる。授乳期間が長くなるに従って乳がんリスクが低下する傾向があるとする研究結果もある。
4 【母親の情緒安定に役立つ】
授乳で分泌されるオキシトシンは前頭葉機能を改善させ、気分を安定させる働きがあるため、イライラや産後うつの予防にも役立つといわれている。

6カ月以降の母乳に栄養はない…は誤り!正しく知ろう

指をくわえる赤ちゃん
ある保護者は母乳を与えていることに対し「生後6カ月以降の母乳は薄くて水分がほとんど」と言われたそう。これは本当なのでしょうか?

栄養自体がなくなるわけではない!

奈良教育大学教育学部家政科、米山京子氏の研究によれば、出産後1カ月から12カ月まで26人の女性から母乳を採取し分析した結果、たんぱく質は1~6カ月で15~35%減少したものの、糖は10カ月まで一定でその後は上昇した。カルシウムは6カ月以降減少傾向となる一方で、脂肪とエネルギー量は月齢による変動がなかったとしています。

この結果を見ると、6カ月以降、タンパク質やカルシウムについては母乳以外から摂取の必要性はあるようですが、栄養がなくなってしまうといった誤った認識を持たないよう注意が必要です。ただし母乳の栄養素は母親の栄養状態や体調に大きく左右されますので、その点は月齢に関わらず注意が必要です。

母乳に不足しがちな栄養素の例
ビタミンK 母乳は腸内細菌ビフィズス菌が多いためビタミンKを産生しにくいそうです。生後期間に関わらず、母親が納豆、小松菜、春菊、ほうれん草などのビタミンKを多く含む食品を摂取することが大切です。
ビタミンD カルシウムを骨に定着させるビタミンDが不足すると、くる病やビタミンD欠乏性低カルシウム血症の心配があります。日光を浴びるようにする、魚、卵黄、キノコ類など食品から摂取するなどを心がけ、母乳中のビタミンDが欠乏しないようにしましょう。
脳や細胞に酸素を運ぶ役割を果たす鉄。不足すると貧血状態となり、3カ月以上続く場合には運動機能や知能にも影響が出るといわれています。鉄分を多く含むレバーや緑黄色野菜、鉄の吸収を助けるビタミンCを積極的に摂ることを心がけましょう。
【参考】WHOなどの母乳育児への考え方
ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機構)は母乳育児を推奨しており、生後6カ月間の完全母乳育児を続けた後、適切な離乳食を食べさせながら、母乳育児を2年以上続けることが、子どもの成長にとってよいとしています。

保育園で母乳育児は実践できる?冷凍母乳取扱いの注意

赤ちゃんと保育士
皆さんの勤務先、お子さまの預け先の園は母乳育児についてどのような方針をお持ちでしょうか。子どもの免疫力アップなどに役立つことから、積極的に取り組んでいるという園もあれば、冷凍母乳の衛生管理上受け入れはしていない…というところもあるようですね。

冷凍母乳受け入れに関して知っておきたい指針
保育所保育指針
(児童福祉法)
乳幼児期の食事は、生涯の健康にも関係し、順調な発育・発達に欠くことができない重要なものであり、一人一人の子どもの状態に応じて摂取法や摂取量などが考慮される必要がある。


母乳育児を希望する保護者のために、冷凍母乳による栄養法などの配慮を行う。冷凍母乳による授乳を行うときには、十分に清潔で衛生的な処置が必要である。(第12章:健康・安全に関する留意事項)
保育所食育に関する指針
(食育推進基本法)
冷凍母乳の受け入れ体制も整え、母乳育児の継続を支援できるように配慮する。

保護者の中には、冷凍母乳の受け入れを断られ、母乳保育そのものを否定されたと感じたり、迷惑なのだと誤解されてしまう方もいらっしゃるよう。保育所保育指針には上記のように記述があるため、やむを得ず冷凍母乳の希望に添えないという場合には、園の方針などを説明し誤解のないようにすべきでしょう。

冷凍母乳取扱い時に注意すること


実際に授乳を行う保育士さんだけでなく、保護者に対してもその管理について正しい知識を持ってもらうことが大切です。

保育所における冷凍母乳の取り扱い注意点
■ 冷凍後1週間以内のものを原則として受け入れること
(1カ月の保存が可能ともいわれるが温度や保存環境の影響を受けるため望ましい。)
■ 冷凍母乳を受け取る際には名前、搾乳日時、冷凍状態を確認し-15℃以下の冷凍庫で保管する。
■ 母親の体調が悪い場合などには母乳を与えないほうがよいケースがある。
■ 専用の冷凍庫を使用する、または他の食品に触れないよう専用の容器やビニール袋に入れて保管する。
■ 感染症予防などのため、母乳が飲む子どもの母親のものであることを確認する。
■ 解凍は授乳時間に合わせて行い、解凍するときは、熱湯や電子レンジは使わず、母乳バッグのまま水につけ、数回水を取りかえる。解凍後は40℃ほどの湯せんで加温する。
■ 再冷凍は行わない。飲み残しは破棄する。
■ 成分が分離しやすいためゆっくりと振り混ぜてから与える。
■ 手指の消毒や使用する器具の衛生管理に十分注意する。
■ 保護者との冷凍母乳の受け渡しや解凍の手順などについては、全職員が知識共有・確認をする。
■ 保護者には事前に手順を伝え、飲まない歳の対応などについて話し合っておく。

 

保護者に伝えるべき冷凍母乳の注意点
■ 乳房や乳首に異常があるとき、発熱や下痢、肝炎などの不調がある場合には、衰弱により必要な栄養素が不足する場合があるので母乳を控えた方がよいとされる
■ 手洗いや乳房、乳頭の清浄などを徹底すること。搾乳機を使用する場合は器具の清潔にも注意すること。
■ 専用の母乳バッグに搾乳したらすぐに冷凍すること。
■ 母乳バッグの内側を手で触らないこと。
■ 搾乳量の多少にかかわらず1回の搾乳で1バッグとすること。
■ 乳腺炎防止のため、都度完全に搾り取るようにすること。
■ 母親の氏名,搾乳日時を母乳バッグのシールに記入すること。
■ 母乳バッグの空気を十分に抜いて口がゆるまないように巻いて密着させること。
■ 凍結後一週間以内のものを凍ったまま保育所に持参すること。持ち運び時に解凍しないよう保冷バッグなどを使うこと。
■ 服薬の際には必ず医師に確認し、喫煙や飲酒は避けること。

哺乳瓶を嫌がる子どもには…

母乳育児の場合には、ゴム製の乳首を嫌がり、お母さんの母乳であっても哺乳瓶から飲まない…ということがあります。その場合には下記のような対処が考えられます。

【昼休みなどに母親が来園する方法】
保育者や園の環境に慣れると哺乳瓶から飲むことも多いため、慣れるまでは昼休みなどに母親に授乳に来てもらう…という園もあるようです。
【空腹のタイミングと他の方法の施策】
空腹のタイミングをよく観察し、空腹でも飲まない場合にはスプーン、スポイトなど他の方法を試すこともできます。
【おっぱいの質感に近い哺乳瓶を試す】
赤ちゃんが母乳を飲む口の動きを研究して作られた哺乳瓶であれば、おっぱいを吸うのと同じ口の動きで飲めるため、比較的飲みやすい場合もあります。

家族の数だけ考え方がある…想いに寄り添える保育士になろう!

乳幼児
母乳育児を推奨し、なるべく冷凍母乳を持ってきてもらうという方針をとる園、衛生面の懸念から人工ミルクで保育を行う園、各保育施設の方針ごとに状況は異なることと思いますが、いずれの場合も各家庭、保護者の希望や事情に寄り添うという姿勢が重要でしょう。

  • ・母乳が出る量には個人差がある
    ・母体の状態により含まれる栄養素まで変わってきてしまう
    ・母乳で育てなければという意識がストレスとなる場合がある
    ・母乳育児を園に依頼することを「迷惑では?」とためらう保護者もいる

など、さまさまなケースが考えられます。保護者との信頼関係を築き、子どもたちにより良い環境を与えてあげるためには、相談しやすい環境づくりを心がけることも大切でしょう。

編集者より

お昼寝する赤ちゃんと母親
母乳育児について考えるうえで知識を身につけることは大切ですが、保護者もさまざまな思いを持ち、抱える事情も異なります。一般論で良し悪しを決めてしまうのではなく、例えば母親の体調が悪いときには人工ミルクに切り替えた方が良いケースもあることなども知ったうえで、状況によって幅広い対応ができるよう心がけたいですね。

参考資料

《参考》厚生労働省
《参考》保育園における冷凍母乳実施上の留意事項
《参考》非営利活動法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会
《参考》福祉教科書 保育士 完全合格テキスト 下 2014年版
《参考》母乳育児のメリット
《参考》母乳の利点について
《参考》パピマミ

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