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幼稚園教諭や小学校教諭も保育士として認可保育所で働けるようにする…厚生労働省が待機児童の解消に向け、このような対策を検討していることをご存じでしょうか。2015年11月に発表されたこの方針については、現場で働く保育士さんから賛否両論さまざまな声が寄せられています。今回は200名の読者の皆さまにご意見を伺ってみました。

保育士を幼稚園・小学校教諭で代替できるように…厚生労働省が方針を発表

指示棒を持つ保育士さん
厚生労働省は2015年11月16日、認可保育所で幼稚園教諭や小学校教諭も保育士として配置ができるようにする方針を発表しました。具体的な案としては預かり人数や年齢に応じて定められている保育士の配置人数の3分の1まで、幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭などで代替できるようにすることが提案されており、厚労省は来年度の実施を視野に検討を進めているとのことです。
 

検討案としては、幼稚園教諭は3~5歳児、小学校教諭は主に5歳児の保育を担当することが検討されています。(※養護教諭は対象年齢を定めない。)また保育に関する研修の受講をすることが必要となるそう。
 
なお、厚労省によればこれは保育の受け皿が安定するまでの緊急の対策であるとしています。

 
今回はまず、このニュースに対する認知度を把握するために、読者の皆さまにアンケートを行ってみました。すると「知らなかった」と回答する方が最も多く、全体の39.5%となりました。ニュースの発表から日が浅かったことも影響していますが、「良く知っている(16.5%)」「だいたい知っている(25.5%)」の合計と比べても、まだ情報が十分には行き渡っていないことが伺えます。
 
認知度調査グラフ
 

「反対」が過半数…現場で働く保育士さんの意見とは?

困り顔の保育士さん
ではこの方針について、主に保育業界で働いている読者の皆さまはどのように感じるのか、その賛否を伺ってみました。すると反対と回答した方が半数を超える53.5%、それに対して賛成と回答したのはわずか11.0%という結果になりました。
 
賛否グラフ
 
今回ご回答いただいた読者の皆さまは、その82.5%が保育士の方です。そのことからも、現場において多くの方がこの方針に何らかの不安や問題を感じていらっしゃることが伺えます。
 

賛成派、反対派、それぞれの意見を聞いてみよう!

悩む保育士さんのイラスト
ここからは賛成派、反対派、またどちらとも言えないと回答した皆さまそれぞれのご意見をまとめてみましょう。

反対派のご意見

まずこの方針に「反対」と回答された皆さまに、その理由を複数回答で伺ってみました。すると最も多く寄せられたのが「保育士、幼稚園教諭、小学校教諭それぞれに必要な知識やノウハウは異なると思うから」で95票、次いで「保育士不足の原因は他にあると思うから」が90票、「問題の根本的な解決にならないから」が80票となりました。またその他「保育の質が下がると思う(56票)」「保育士という職種そのものの価値が下がる(51票)」といったご意見も寄せられました。
 
反対理由グラフ
  

小学校教諭が保育の仕事をするのは少し難しいような気がする。(40代/女性)
足りないから代替するよりもなぜ保育士が足りないのか考えてほしい。目の前の問題だけを見て解決するのではなく、根本的な原因を探ってほしい。(30代/女性)
ますます保育士の立場が低くなる気がする。代わりで成り立つと世の中に思われるのではないか。国は保育士をなめているからそういうことが軽々しく言えるのでは?(30代/女性)
保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、それぞれ資格や免許があるということはそれに特化した技術や知識が必要だからではないか?いくら重なる部分の技術や知識があるにしても、さらに掘り下げた部分は分からない。『人数合わせ』でしかないと思う。(20代/女性)

 

賛成派のご意見

続いてこの方針に「賛成」と回答された皆さまに、理由を伺ってみました。回答で最も多かったのは「保育士以外のさまざまな知識を持つ人材が、保育に携わるのは良いことだと思うから」で18票、次いで「保育士の人材不足解消に役立つから」が16票、「小学校入学に向けたカリキュラムの検討など長期的な視点を保育に取り入れることができるから」が14票となりました。
 
賛成理由グラフ
 

色々な方が保育の仕事をするのは良いと思う。ただ、子どもと遊んでいればいいと思って入ってきて欲しくない。保育園の良さをなくさないで新しい風を入れることができるような働きかけをして欲しい。(40代/女性)
保育士資格が無くても保育園で働けるようにすることは賛成。保育の質を下げないために対策は必要だが、現場で働く人が増えればいま抱えている問題にも歯止めがかけられると思う。(30代/女性)

 

どちらとも言えないと回答した方のご意見

どちらとも言えないと回答された方のご意見も伺ったところ、「保育士資格を取得する前提で雇用するなど条件が必要だと思う(83票)」「運営状況などで規制緩和をすべき施設とそうでない施設を決めるべきだと思う(48票)」などの声が多く寄せられました。また他の資格保有者がどの程度の知識を持っているのかわからない、幼稚園教諭や小学校教諭の業務に対してしっかりと理解していないので何とも言えない、というご意見も挙げられました。
 
どちらとも言えない理由グラフ
 
 

保育の仕事をもっと知って…保育士が行政に伝えたいこと

私服の保育士さん
最後に、読者の皆さまが今回の方針発表を含め、行政の待機児童解消、保育士不足への取り組みについて感じることを自由回答で伺ってみました。ほんの一部ではございますが、その内容をいくつか抜粋してご紹介しましょう。

◆現場の声にもっと耳を傾けて…
なぜ、保育士が不足しているのかよく考えてほしい。資格を持っている保育士がなぜこんなにたくさんいるのに保育の職に就かないのかを考えるべき。まずは現保育士の処遇改善。そこに努めてほしい。新しい、上手くいくか分からない政策を簡単に次から次に出すのではなく、今現場で働いている私たちをまずは救ってほしい。いったいなんのための保育士資格なのだろうか?現場で働いている保育士の声にもっと耳を傾けてもらいたい。(20代/女性)
◆保育士は子どもと遊んでる仕事じゃない!
以前「保育士は子どもと遊んで昼寝すれば良いから楽だよね…」と言われたことがあるがそれは違う。子どもたちの命を預かっている。いろいろなお母さん、お父さんと関わっている。国は「代替」をたてるのではなく「保育士の地位向上」を確保するべき。(30代/女性)
◆それぞれの職種の違いから思うこと…
認定こども園に転勤した保育士から、幼稚園教諭と保育士の考え方の違いを実体験していることを聞いた。そのような姿からも、保育園で他の資格保有者が保育していけるのか疑問。ただ子どもを預かるだけなら誰でもできると思うが、ただ預かるだけでいいのか?もう少し考えてみるといいと思う。(50代/女性)
◆保育士をもっと大切にして!
潜在保育士は溢れるほどいます!まずその保育士がレジ打ちと同等の時給では専門職の意味がない。やりたい人を潰しているのは国なのではないか?そして保育の質を下げてしまうのも国なのではないか? 保育士をもっと大切にしてほしい。(30代/女性)
◆保育の質を大人の都合で下げてはいけない
人生の始まりである乳幼児期は自己肯定感を育む大切な時期。子ども一人一人の自立心の芽生えや土台を培うこの時期に、大人の都合や社会の合理化を押し付けて保育の質を下げてはならないと思う。(50代/女性)

 
いただいた中でやはり多かったのは、応急処置よりもまずは保育士が働き続けられない理由にきちんと向き合ってほしい、業務の負担も責任も重く、命を預かるという重要な仕事に対して適切な処遇改善を実現してほしいという声でした。

 

編集者より

小鳥のイラスト
厚生労働省は今回の対策を、あくまでも期間限定の緊急対策としていますが、有識者討論会では、保育関連団体から、保育士の確保や定着率向上のためにも処遇改善を目指すべきとの指摘も多くあったそう。また今回のアンケートでも「労働環境の改善を優先してほしい」「働く人の意見に耳を傾けるべきだ」「現場をもっと良く知ってほしい」などというご意見が非常に多く寄せられました。
 
保育士の確保ができないから他の人員で代替する、このアイデアは短期的、表面的な数値では功を奏する可能性もありますが、一方で懸念されている保育の質の低下や保育士の業務負担が増えるという課題に直面する可能性も十分にあるでしょう。また、このことが保育士の離職率の低下や、潜在保育士の復帰促進につながるとは思えません。
 
保育の仕事は大変やりがいの大きい、社会的にも必要不可欠な仕事です。しかしそういった”やりがい”だけでは保育士さんが自身の生活や大切な家族を守ることは到底できません。今は保育士さんの献身的な努力と忍耐によって保育が支えられている一面がありますが、このままその状況に甘んじて良い訳がありません。行政がこういった現場の切実な声をもっと真剣に受け入れ、日本の将来を担う子どもたちを育てるという重要な職務に対して、適切な処遇と労働環境を提供するよう、尽力を惜しまないことが大切だと切に感じます。
 

【アンケート実施概要】
・実施期間:2015年11月18日~11月26日
・実施対象:
 保育士(82.5%)・幼稚園教諭(19.4%)
その他保育関連業務(4.4%)・学生(7.5%)・その他(11.3%)
・回答者数:200人(平均年齢:38.5歳)
・男女割合:女性/95%・男性/5%
 
※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!

 

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ニュース参考

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