「地震ごっこ」はゆったり受容を!災害後の子どもの心のケア
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2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と大きな震災が続いています。これを受け、震災後に子どもたちの間で流行することがある「地震ごっこ」というものが話題になっています。地震ごっことはなんでしょう?保育士さんはどんな対応をしたらよいのでしょうか?今回は、子どもの心の専門家で構成される「NPO法人元気プログラム作成委員会」が提供している情報を中心に、震災後の子どもの「地震ごっこ」への対処法についてお届けいたします。

「地震ごっこ」とは

地震ごっこの定義

地震ごっことは、子どもたちが地震災害のトラウマやストレスを乗り越えるために本能的に行なう、遊びの形をとった自己治療の試みです。子どもたちは、地震ごっこの中でわざと地震を再現し、騒いだり逃げたりする真似をすることで少しずつ地震災害の恐怖を乗り越えていきます。

以下は、ニキ・ハーティーホスピタル理事、精神科医の仁木啓介先生による説明です。

地震ごっこは、コントロールできなかったものを、遊びという形で象徴的な出来事を再現して、コントロール感を取り戻す行為であり、子どもが、平常な状態を取り戻すための一種の方法です。

東日本大震災のときには世界の子どもたちの間で「津波ごっこ」も流行ったそうです。トラウマを乗り越える自己治療的な遊びのよく似た例として、戦中戦後の時期の子どもの「戦争ごっこ」があげられます。

地震ごっこの例

地震だ!と言って、地震の様子を再現し、逃げたり隠れたりするふりをします。以下のようなものが報告されています。

・家具を「震度6」などと言って揺らす
・積み木を積み上げ、わざと崩して「家が崩れた!逃げろ!」などと騒ぐ
・手など身体を揺らして「地震だ!」と叫ぶ
・地震速報の音声の真似をする

地震ごっこの問題点

周囲の大人から見ると不謹慎に見えるので、感情的に叱ってやめさせようとしてしまうことがあります。また、地震災害のあとは子どもも大人も地震関連のトラウマを抱えていることが多いので、周囲の人が地震ごっこに恐怖心を感じ、それが大きなストレスになってしまう場合もあります。

地震ごっこ自体は問題のない、むしろ健康的な行為です。しかし、時にエスカレートして物理的に危険な行為になってしまう場合があります(椅子を高く積み上げ、それを崩すなど)。こうした場合は周囲の大人が対応方法を考えなければなりません。

地震ごっこをする子どもの心理

安全が確保されたからこそ出てくる遊び

専門家によれば、地震ごっこは災害急性期の心身ともに危険な状態では出てきません。被災地では、「当面の生命の安全が確保された」という安心感の出てくるころ、たとえば余震がやや収まったころから始まったりします。

以下は東京学芸大学教授、臨床心理士の小林正幸先生による解説です。

基本は「子どもの心のケアを自分で行っている」と考えてほしいのです。子どもは、安全や安心が確保されると、子どもが抱えこんでいる恐怖や不安を表現するようになります。心のひとつの表現方法として、これらの遊びを行うようになることも多いのです。子どもは,遊びや,それに伴う会話を通じて,さまざまな気持ちや考えを表現し,少しずつ心の安定を取り戻していくのです。

災害ごっこは被災地以外でも起こる

災害関連のごっこ遊びというと、実際に大きな被害を受けた被災地でだけ起こるような気もしますが、実はそうとは限りません。報道などで災害の恐怖を受け取る地域にいる子どもたちは、みんなが起こす可能性があります。

2011年の東日本大震災のときには、遠く離れたアメリカでも、現地在住の日本人の子どもたちの間で「津波ごっこ」が流行ったという報告があります。これは日本の被災地の子どもたちのケースよりもずっと早く観測され、専門家を驚かせました。

アメリカのケースをひもとく鍵は、上の項の「安全が確保されたからこそ出てくる」という部分です。東日本大震災後において、被災地の子どもたちよりもアメリカの子どもたちの日常のほうが安全だった、ということですね。

被災地以外の地域で地震ごっこをする子どもがいても、驚いたり心配したりする必要はないことがわかります。

保育士さんは地震ごっこにこう対応しよう

基本的に受容を

上にも書きましたとおり、地震ごっこは、ある程度の安全が確保されており、かつ心が健全であるからこそ起きるものです。見つけたときにはびっくりするかもしれませんが、できるだけ落ち着いて受容し、共感して見守ってあげましょう。

子どもが、”地震ごっこ”を行える能力をもっていると考えて下さい。圧倒的に辛い出来事であれば、地震ごっこはできません。しっかり見守り、その流れをみましょう。

安心のできるストーリーで終える手助けを

子どもは、遊びのなかで恐怖や破壊を繰り返しながら、「それでも助かった」という安心感を得ようとしています。保育士さんは、その安心感のサポートをする側に回れるようにしましょう。以下は具体的な例です。

地震ごっこで家が壊れたというストーリーで終えるのでは無く、助かったストーリーに変えたり、助かったことを強調できるように、大人が介入ができたら素晴らしいと思います。
壊したブロックについては、「復活するよ、もっと頑丈な家を作ろう」と笑顔で言って、一緒にブロックで建物を作ったり、「逃げろー」という子どもに対して、「そうだ避難だー」と言って子どもを抱えて逃げる真似をして、子どもを抱きかかえ「逃げれた」と言って一緒に喜びましょう。
「避難しましょう」と子どもと一緒に動いて、「大丈夫でした、もう安心です」と完結する作業を行いましょう。

イメージしてみると、なんだか私たちまでほっとする感じがしませんか?子どもたちと一緒に大人の私たちも一緒に災害の恐怖を乗り越えていけるといいですね。

危ないときには安全面での介入を

災害ごっこ自体は健全な行為なのですが、物理的に危険な行為に発展している場合は止めなければいけません。阪神大震災のときには以下のようなケースもあったようです。

神戸エリアから伝わってきた中学生の場合の話では、「地震ごっこ」は危険なものでした。学校で椅子を山高く積み上げ、一挙にそれを突き崩すというものであったようです。このような場合は、止めなければなりません。

基本的には遊び自体には共感と受容の態度を示しつつ、「それは危ないからやめよう」などと声をかけます。小さい子どもで興奮して暴れているようなときは、抱きとめる、表情から見てとれる感情を言葉で代弁してあげる、などの方法があります。

止め方の詳細については、以下のページを参考にしてみてください。

幼いお子さんの様子に応じた関わり(5):危険なことをする | 元気プログラム作成委員会

怖がる子・平気そうな子にも心配りを

上にも書いたように、地震ごっこをする子たち自体は問題ではありません。子どもたちの様子を見ていると、地震ごっこに積極的に乗らなかったり、怖がって固まったようになってしまったりしている子もいるでしょう。それとは別に、無関心で平気なように見える子たちもいるはずです。こういった周囲の子たちにも目を配ってみてください。

地震遊びを怖がっている様子の子たちには、そっと他の場所で遊ぶようにうながしたりして、地震遊びを目にしないですむような対応をとります。平気そうな子たちには、見た目が大丈夫そうだからといって大丈夫とは思わず、「地震遊びをできないぐらい傷が深刻なのかもしれない」という気持ちを持って、慎重に接してあげてください。

参考になる書籍・資料など

以下、参考になる書籍や資料などを紹介します。

こちらのコミックは、児童相談所で奮闘するスタッフの日常を描いたものですが、この第3巻には震災特別編5話が収録されています。
ちいさいひと 青葉児童相談所物語(3) (少年サンデーコミックス) 電子書籍: Kindleストア

こちらのページでは、支援者向けに災害時の子どもの心のケアについての膨大な情報が集められています。
特設:熊本大震災|子どものこころのケアと支援者のために | 元気プログラム作成委員会

こちらのページは、災害時の子どもの心のケアに関連する詳細なリンク集です。
震災時の子どもの心のケア – CRN  子どもは未来である

避難所でもできるような、子ども向けの心の落ち着く遊びが紹介されています。
災害は他人事じゃない~大人が子どもにできること~ – とくしま はぐくみネット

子どものための防災についてのパンフレットはこちら。
地震がくる前に子どものためにできること 東京都福祉保健局

東日本大震災後に被災者に無償配布されていた、「家庭でできる子どもの心のケア」冊子のダウンロードができます。
家庭でできる子どものこころのケア | 元気プログラム作成委員会

編集者より

いかがでしたでしょうか。被災地以外でも地震ごっこが流行る、地震ごっこをしない子のほうが実は傷は深刻、などの話はちょっと意外だったかもしれません。知識を身につけておけば、園の子どもが地震ごっこをし始めたときにも落ち着いて対処できそうですね!

参考文献

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